今回は猫のFIP治療に関する知識をアップデートしたいと思います。
モルヌピラビルについても少し触れておきます。
以前の記事でもお伝えしていますが、FIP(猫伝染性腹膜炎)は発症するとほぼ100%亡くなってしまう、恐ろしい病気でした。
ここ数年で有効な治療薬が開発され、我々獣医師も、飼い主様にも認知されるようになりました。
代表的な治療薬はMUTIAN(ムティアン)という薬です。
以前の記事
FIPの積極的な治療〜MUTIAN(ムティアン)からCFN(CHUANFUNING)へ〜
症例紹介(FIP)
Case.4 – 動物病院フロンティア
当院ではこれに替わる薬である、CFN(CHUANFUNING)を取り扱っています。現在、MUTIANの供給が不安定なためです。
成分は同じです(GS441524:核酸類似物質、レムデシビルの活性型)。
他にも同様の成分の薬がありますが、有効成分の実際の含有量には疑問があり、当院では取り扱っていません。
改善率、再発率は以下のようになっています(当院が独自に調べた結果ですのでご承知おきください)。
改善率
MUTIAN:93%(約400症例)
CFN:99%(約300症例)
他のGS製剤:80%台(約150症例)
再発率
MUTIAN:0.05%(約400症例)
CFN:0%(約300症例)
他のGS製剤:8~33%(約100症例)
近年、ヒトの新型コロナウイルスに対しての治療薬であるモルヌピラビルが猫のFIP治療にも有効であるといった報告があります。
しかしながら現時点では猫への適応に関しては未だ不明な点が多く、催奇形性や発がんの可能性があるとも言われています。
動物実験ではラットの催奇形性、胎児毒性が報告されています。
人間では妊婦さんには使用できません。
メリット
・CFN、MUTIANなどのGS製剤に比較し、費用が格段に安い(薬代だけでの比較で、1/5~1/10ほどになる)
デメリット
・ヒトよりも高容量で使用しなければならないことと、投与期間が長くなる(基本的に84日間の使用)ことなどから、催奇形性、発がんなどの副作用の可能性がある
・薬用量が確立されていない(海外でのいくつかの報告をもとに決めていく形になる)
今後、猫での報告、研究が増え、安全性が確立されるまでは、モルヌピラビルを第一選択薬として使用するのは控えるべきかと思います。
基本的にはGS製剤であるCFNでの治療を優先、推奨します。
しかしながら、金銭的理由などによりCFN、MUTIANなどによる治療を行えないケース、
CFN、MUTIANが効かない場合(耐性化してしまった場合)などに備え、モルヌピラビルの在庫を確保しておくこととしましたので、そのような場合はご相談ください。
2024.5.24追記
FIP治療は未承認薬を使用するため、治療費が高額になります。
当院で医療用ローンをご紹介することが可能となりましたので、ご希望の方は仰ってください。
電話相談して頂いた時点での仮審査も可能です。
(審査結果は翌日に出るとのことです。FIPではなかった場合はキャンセルも可能です。)